新ジャンル 天然クール
天然クールな高村さんと僕のお話。
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 02:50:45.56 id:rskxjXoi0
「私の事が好きだって……? いいのか、軽々しくそんなことを言って」
「いや、まだ何も言ってないけど」
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 02:51:38.11 id:rskxjXoi0
「うん、私は別に構わない。ちょうどお昼ごはんを食べる相手が居なかったのでな」
「いや、俺田中と山田と食う約束してて、今から学食いくんだけど……」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 02:53:03.40 id:rskxjXoi0
「一緒に帰らないか、私もちょうど今から帰宅するところなんだ」
「あの、ここ俺の家なんだけど……」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 02:54:31.78 id:rskxjXoi0
「お弁当を作って来たんだが、良かったら一緒に食べないか」
「授業中に他人のクラスで良い度胸だな高村」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 02:55:10.68 ID:rm+zBLWX0
「ああ、知ってる。そして私の家でもある。」
「…お前んち、あっちだろう」
「(なんで、と首をかしげつつ)」
「いや、なんでだろ、って思われても困るんだけどさ…」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 02:56:00.32 id:rskxjXoi0
「すまない、迷惑だとは思ったが、寂しくて思わず会いに来てしまったよ」「高村さん……ここ、男子トイレ……」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2006/05/01(月) 02:56:12.35 id:fQ8B0I7Q0
クール分のせいかわざとやってるようにしか思えない
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 02:57:49.51 id:rskxjXoi0
「映画のチケットが2枚あるんだ、今度の日曜日、デートしてくれないか?」「高村さん、その日修学旅行で京都だぞ?」
「京都には映画館は存在しないのか」
「いや……あるけど……」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 02:58:12.96 id:pzFIIG450
そんなにダンディーなしゃべり方じゃなくてもいいじゃない
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 02:59:59.16 id:rskxjXoi0
「うむ、やっぱり映画は最前列に限る」「そ、そうだね……」
「お前ら、みんな清水寺に居るのに何やってるんだ!?」
「デートだ」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 03:02:01.43 id:pzFIIG450
天然クールてすでに確立されたジャンルだよな
川澄舞とか
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 03:02:55.26 id:rskxjXoi0
「君にプレゼントがあるんだ」「えっ、いいよ」
「手作りの木刀なんだが、喜んでくれると嬉しい」
「…………」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 03:06:55.73 ID:rm+zBLWX0
「むっ、高村さん、とは他人行儀だな。これからは名前で呼んでほしい。
そうだな、巴、そう巴と呼んでほしい」
「祥子さん、だったよね?」
「昨日までの名前に用はない。今を大事にしたいんだ。」
「祥子さん?」
「何だ?」
「………」
「なかなか難しいものだな」
「はあ…」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 03:07:14.94 id:rskxjXoi0
「おらおらー、金出せよー」「なんだお前ら、私は忙しいんだ」
(うわっ、高村さんが悪い奴らに絡まれてる!?)
「オラオラ、持ってんだろー金?」
(どうする……このまま放って置くわけには……)
「忙しいと言っているのに、仕方ないな」
「へへへ、おとなしくそうすればいいものを」
(くっ、こうなったら戦うしか……!)
「ここに1億円ある、持って行け」
「え……?」
「ちょっとそこの銀行の壁に空いてる穴から拾ってきた」
「あっ、いや、えーっと……ちくしょう、おぼえてやがれ!」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 03:11:20.34 id:rskxjXoi0
「いらないのか、意外と慎み深いんだな」(高村さん……涙)
「おお、そこにいるのは」
「げっ!?」
「ちょうど良かった、重いんだ、手伝ってくれないか」
「いや、僕は、そのー……」
「君達、ちょっと署まで来てもらおうか」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 03:13:02.12 id:rskxjXoi0
「二人きりだな……」「そうだね」
「ふふっ、何だか照れくさいな」
「…………」
「こうしていると私は幸せだぞ」
「ここが留置場じゃなければね……」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 03:17:40.59 id:rskxjXoi0
「幸恵さん、友人として聞きたいんだが」「なぁに?」
「意中の男性にアピールするにはどうしたらいい?」
「そうねぇ、意外と今なら、メイド服とか着て見たらどうかな。
高村さん綺麗だし、そのギャップに萌え萌えかもよ?」「もえもえ……アキバ系という奴だな」
――――――――――――――――――――――――――――――
ぴんぽーん
「はい、どなたですか?」
「高村だ」
「あ、どうしたの、今行くよ」
「やあ、どうかな、似合うだろうか」
「…………死神のコスプレ?」
「冥途服だ」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 03:29:23.07 id:rskxjXoi0
「聞いてくれ、必殺技を編み出したよ。君だけに特別に見せてやろう」「高村さん、武術か何かやってるの?」
「エポック野球盤だ」
「消える魔球?」
「……ネタばらしは感心しないな」
「…………」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 03:32:11.53 id:rskxjXoi0
「高村さん、歳いくつだよ」(汗)「なんだ、世間では流行っていると父親に聞いたぞ」
「いや、それすごく昔だから」
「そうか……」
しょんぼりとうなだれる高村さん、仕方ない。
「見せてくれよ、消える魔球」
「む? いいのか? 知っているんだろう?」
「ああ、なんだか急にエポック野球盤がしたくなったんだ」
「それじゃ、私が持ってきた究極ハリキリスタジアムで遊ぼう」
(消える魔球はいいのか!?)
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 03:34:47.31 id:rskxjXoi0
「幸恵さん、エポック野球盤とは時代遅れなのか?」「あはは、ダメだよぉ高村さん、冗談にしかならないよ」
「そうか、男の子は野球が好きだと思ったんだが」
「そうだね、野球が好きな男の子は多いよね」
「うーむ……」
――――――――――――――――――――――――――――――
ぴんぽーん
「はい、どなたですか?」
「高村だ」
「きょ、今日はどうしたの?」(汗)
「遊ぼう、野球をしようじゃないか」
「2人で?」
「アンパイアごっこだ」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 03:36:16.66 id:rskxjXoi0
僕と高村さんは、人の居ない近所の空き地にやってきた。「ストラーイク!」
「ストラーイク!」
「ボール!」
「ボール!」
「アウト!」
「アウト!」
「どうだ高村君、楽しいか?」
「そうだな……」(涙)
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 03:42:04.13 ID:9JL5pygr0
不覚にもこれはアリだ
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 03:45:04.83 id:rskxjXoi0
「今日こそはお弁当を食べてもらうぞ、時間もきっちり昼休みだ」「おっ、高村さんちょうど良かったね、今日は僕も1人なんだ」
「腕に寄りをかけて作ったんだ、食べて欲しい」
「何を作ってきたの?」
「私の手作りカレールウだ」
「…………」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 03:47:08.28 id:rskxjXoi0
「えっと……いっ、いただきます!」ガツガツガツ
(泣いてない、泣いてないぞ俺!)
(せっかく高村さんが作ってきたんだ、食べなきゃ!)
「おいしいだろうか」
「ああ、もうサイコーだね!」
「デザート用にシチュールウも作ってきたんだ、気に入ってくれて良かった」
「…………」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 03:50:58.56 id:rskxjXoi0
「一緒に天体観測をしないか」珍しく、夜に高村さんが尋ねてきた。
何だかんだ言って、気に掛けてくれるのはすごく嬉しい。
しかし、意外に良い趣味をしてるんだな。
――空き地にて
「さあて、見ようか」
「あれ、これって……」
「顕微鏡」
「…………」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 03:54:51.35 id:rskxjXoi0
「見てくれ、ボルボックスがいっぱいだ!」「ミジンコって思ったより可愛いんだな」
「ほら見てくれ、アメーバーが細胞分裂をしている」
高村さんは大はしゃぎだ。
これはこれでいいのかもしれない。
夜の空き地で微生物観察というのもシュールだが。
「よし、次は君の部屋から持ってきた、このティッシュの中身を観察してみよう」
「ちょっと待ったああああああああ!」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 04:01:29.27 id:rskxjXoi0
「幸恵さん、顕微鏡じゃ天体観測はできないらしい。初めて知った」「あはは、高村さんったら、マジうけるー♪」
「いや、私は結構本気だったんだがな」
「高村さんって、頭良さそうなんだけどなぁ」
「……………………」
(ちょっとショック受けてるかな? 言い過ぎちゃったかも)
「おっと、目を開けたまま寝ていたらしい、ごめん」
「……高村さん」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 04:07:58.54 id:rskxjXoi0
「お、俺、高村さんの事好きなんだ!」(うわー、2組の山岡の奴が告白してる、物好きだな)
体育館裏に高村さんが行くから、気になって見に来てしまった。
まさか、OKしたりはしないだろう。
「食べてみてくれ」
「これは?」
「見ての通りだが」
それは、前見たのとは違う、市販品のカレールウだ。
見慣れたパッケージイラストの箱から取り出すと、彼女はそれを相手に渡した。
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 04:08:24.79 id:rskxjXoi0
「えっと、これをどうすればいいのかな」「食べてみてくれと言ったんだ」
「冗談きついなぁ高村さん!」
「私が好きなあいつは、美味しいと言って食べてくれた」
「え……?」
「すごく優しいんだ」
(高村さん……)
「そっか、ごめん」
「悪く思わないでくれ、代わりにこれを君にもあげよう」
「これは?」
「あいつの部屋で拾ってきたティッシュ、中身入りだ」
「…………」
(高村さあああああああああああん!?)
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 04:16:26.50 ID:9JL5pygr0
やばい展開が読めない
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 04:16:41.68 id:rskxjXoi0
「高村さんおはよ……う?」
「やあおはよう」
「どうしたの、その格好!?」
「うん、友達に冥途服がウケなかったと言ったら、コスプレを薦められたんだ」
「コスプレ……」
「ちょっと恥ずかしかったが、似合うだろうか」
「ラーメンマンはやめた方が……」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 04:23:42.85 id:rskxjXoi0
「幸恵さん、コスプレはダメらしいぞ、どうもあいつは流行に疎いらしい」
「あはは、ラーメンマンじゃだめだよ高村さん」
「私は一生懸命なんだ、どうしたらいい?」
「そうだね、結構高村さんって不器用だよね」
「そうかも知れないな」
「手紙書いてみるとかどうかな?」
「そうか、ありがとう」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 04:24:46.68 id:rskxjXoi0
「おはよー」
「おっ、なんだなんだ、ラヴレターか?」
「ばっ、バカっ、ちげぇーよ!?」
(なんだろう、くつ箱の中に手紙が……)
『親愛なる植原君、いつも迷惑ばかりかけてすまない。
今日は思い切って手紙にしてみた。
君のことが好きなのだが、上手く伝わらなくてすまん』
「おおーっ、モテモテじゃん?」
「ああ、そうだな……」
「血で書いてあるけどな」
「ああ、そうだな……」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 04:26:52.62 id:rskxjXoi0
「…………」
「ねえ高村さん」
「…………」
「ここ、保健室なの」
「そうですね」
「何であなたがここに?」
「赤い絵の具で書いた手紙にびっくりして、私を心配した植原君が迎えに来るからです」
「……来ないと思うけど」
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 04:31:30.36 id:rskxjXoi0
「ちょっと植原君」
「はい? なんですか、保険の北上先生が来るなんて、何かありました?」
「うちの部屋で居座ってる座敷童子なんとかしてくれない?」
「座敷童子……」
ああ、なんとなく想像ができる。
もう昼休みだが、まさか朝から居たのか?
ガラガラガラ
「やあ植原君、私を心配して来てくれたんだな」
「……あの血手紙だろ、すぐ絵の具だってわかったよ」
「ふふふ、さすが植原君だな」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 04:32:21.92 id:rskxjXoi0
「ほら、冷静なつもりでも涙出てるじゃないか」
「ちょっと悲しかったんだ、このまま来てくれないかもと思って」
「昼飯でも食いに行こうぜ、まだ30分ある」
「そうだな」
「ほら、ハンカチ貸してやるよ」
「大丈夫、君の部屋から持ってきた中身入りの」
ガシッ
「いくつ持ってるんだ……?」
「38個」
「…………」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2006/05/01(月) 04:36:38.71 id:PxfWV/yf0
高村さん、使用済みティッシュにこだわるなwwwwwwww
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 04:40:52.62 id:rskxjXoi0
「幸恵さん、何だか植原君に怒られたよ」「高村さんやり過ぎだよー、ダメだよそんなんじゃ」(汗)
「私に足りないのはいったいなんだろう」
「一般常識じゃないかな」
「ひどいな幸恵さん、私が変な人みたいじゃないか」
「変な人だよ?」
――――――――――――――――――――――――――――――
「あのー、高村さん」
「何だ」
「その格好は……今からどこか海外旅行?」
「私の心はとっても傷付いた」
「何かあったの?」(汗)
「というわけで、傷心旅行に出る、付いてきてくれ」
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 04:41:55.79 id:rskxjXoi0
「すまない、私のわがままに付き合わせてしまって」
「かまわないけどさ、別に」
「私はわがままな女だ、怒っているだろう」
「いや、そうでもないよ」
「ふふふ、優しいな君は」
「というかさ、高村さん」
「うん」
「近所のショッピングセンターでソフトクリーム食べてるだけなんだが」
「財布の中に843円しか無かったから」
「…………」
「でも、私は幸せだぞ」
「そ、そっか」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 05:00:00.52 id:rskxjXoi0
『来たれ! 陸上部』
そんな貼り紙を見て、ぼんやりしている高村さんを見つけた。
「おお植原君、一緒にクラブ活動でもやらないか」
「いや、別に俺クラブとか興味ないし」
「クラブはいいぞ、まさに青春って感じだ」
「いやー、体育会系ってあまり好きじゃないし」
「じゃあ私がクラブを作ったら入ってくれるか?」
「え?」
「経済学部」
「……何を言っているのかわからないぞ」
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 05:00:42.34 id:rskxjXoi0
こうして、俺は半ば学校非公認のクラブ「経済学部」に入る事になった。
入らないと言ったら、すまないと背中を向けて小さく震える。
これはもはや犯罪だろう。
「というわけで、今日から私達は経済学を学ぶぞ」
「どういうわけか知らないが、何やるんだよ」
「そうだな、ベンチャービジネスでもやろうか」
「あれ、高村さんってパソコンとか持ってなかっただろう?」
「いや、マイコンって!?」
「ぴゅう太と言うんだ、最新式らしいぞ」
「…………」
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 05:02:50.10 id:rskxjXoi0
経済学部はとりあえず辞めることになった。
そもそもベンチャーになり得ていない。
「そこで工学部だ、植原君」
「まだやるのか高村さん……」
「ベンチャービジネスといっても、ITができねば意味が無いらしい」
「まあ、ITっつーか、プログラムっつーか」
「そこで、ぴゅう太とエポック野球盤をUSB接続してみた」
「…………」
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 05:09:02.21 id:rskxjXoi0
「植原君、ITというのは奥が深いな」
「ああ、そうだな……」
「そこで水泳部を結成することにしよう」
「ていうか、まだやるの!?」
「いいからそこで待っていろ」
「待つって、えーっと、うん」
――15分後
「どうだろう、似合うかな」
「ひょっとして、夏に向けて買った新しい水着を見せたかっただけだとか?」
「よくわかったな、さすが植原君だ」
「…………」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 05:12:15.93 id:rskxjXoi0
家に帰った俺は、あの時見せてもらった水着の事を思い出す。
「似合ってたけど、なんつーか、やり方が回りくどいつーか」
俺の彼女はかなり馬鹿だと思う。
だが、そこが彼女の魅力でもある。
「ははは、まぁこういうのも良いかも知れない」
ピンポーン
「あれ? どうしたの高村さん」
「水着を買ったら帰りの電車賃が無かった、500円貸してくれないか」
「…………」
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 05:22:33.76 id:rskxjXoi0
るるるるるるる
「はい、植原です、ああ、高村さんか、どうしたの?」
「今、白雪姫を読んだんだ」
「童話?」
「白雪姫は悪い魔女に毒リンゴを食べさせられて、眠ってしまうんだ」
「そうだな」
「そして、王子様のキスで目を覚ますんだ」
「それがどうかした?」
「現代には魔女が居ないので、他の方法を試してみようかなと思う」
「え?」
「植原君が会いに来るのを待ってるよ」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 05:23:36.60 id:rskxjXoi0
そこまで言って電話が切れた。
他の方法って何だろう?
まぁいい、明日は英語の単語テストがあるし、勉強をしておかなければ。
…
……
………
「なーんか引っかかるよなぁ」
もう夕陽も山の端に沈もうとしている中、俺は自転車に乗って学校へ向かう
馬鹿なことをしているとは思うが、あの子なら学校に居る気がした。
おそらくは屋上だろう。
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 05:25:24.32 id:rskxjXoi0
果たして植原君は来てくれるだろうか?
私は植原君を困らせる為に、ちょっとしたいたずらを試みたわけだ。
何だかんだで植原君はモテる方だと思う。
男子というのは鈍感なだけで、案外と女性は好意を寄せている事が少なくない。
事実、植原君も……
誰も居ない学校の屋上で、ぼんやりと夕陽を見る。
初めて彼と会ったのも、こんな夕暮れの屋上だった。
私がエリマキトカゲの物まねをしていたら、物陰に隠れていた植原君が、コカコーラを噴いたのだった。
「……何で私、エリマキトカゲの物まねなんてしてたんだろう」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 05:27:40.50 id:rskxjXoi0
「エリマッキー! エリマッキー! エリマキッキー! ……うーむ、何か違う」
「ぶほあっ!? げふげふっ」
「おっ、げふっ、お前誰だよ?」
「私だ」
「…………」
「ま、まぁいいけど、こんなところで何してるんだ?」
「エリマキトカゲの物まねだ」
「…………」
「む、面白くなかったか」
「いや、エリマキトカゲそんな風に鳴かないから」
自転車をこぎながら、当時のことを思い出す。
なんで俺、こんな女の子好きになったんだろう……
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 05:33:39.78 id:rskxjXoi0
植原君はとても面白い人だった。
割と物静かで、あまり友達の多い方でもなかった彼だし、話したのもその日が初めてだ。
だが、親切にも私にエリマキトカゲの物まねを、丁寧に教えてくれた。
そして、日も暮れる頃に私にエリマキトカゲ物まね秘伝書を渡してくれて――
「いや、渡してないから」
「おっ? 植原君じゃないか」
「あの後、一緒に学校帰りにマク○ナルドに行って、一緒に話しただけだろうが」
「うむ、ところであの時私はなぜエリマキトカゲの物まねなんてしたのだろうか」
「幸恵ちゃんが恋のかなうおまじないだって、お前に教えたって言ってたけど」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 05:36:45.95 id:rskxjXoi0
ああそうだ。
私は当時好きな人が居た。
その人に告白する勇気が無くて、私は親友の幸恵に聞いたんだ。
恋がかなうおまじないって無い?
すると、校舎の屋上でエリマキトカゲの物まねをマスターすれば、好きな人と永遠に結ばれると――
「お前、友達選べよ……」
「ふふふ、私のことを心配してくれてるのか?」
「え、いや、まぁ」
「そもそも、私はここに居るなんて言っていないわけだ」
「ばーか、お前の考える事なんざわかるっつーんだよ」
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 05:39:48.03 id:rskxjXoi0
その後、精一杯の勇気で告白したら振られてしまった。
『なんでお前みたいな変な女と付き合う必要あるわけ?』
言われてもわからない、自分が変だなんて。
私は私のまま、精一杯やっているつもりだ。
ナンパをしてくる男は多いが、話しているうちにしかめ面をするんだ。
中には口に出して言う男もいる。
好きで変なわけじゃない。
でも、あの人は違うと思ってた、だって、とても優しくて――
だから、その優しさは特別なもので、私だけのものだと思っていた。
彼は私みたいな変な女にも優しいという、アピールが欲しいだけだった。
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 05:41:56.22 id:rskxjXoi0
「どうした、泣いてんのか?」
「あはは、私は強いんだ、泣くわけがないだろう」
「そうだな、うん、高村さんは強い子だ」
「……嫌いなら嫌いって、言っていいんだぞ」
「ん?」
「君の事試したんだ、ひどい女だろう、お姫様ごっこがしたかったんだ」
「それで?」
「こういう映画みたいな設定をしても、君は付き合ってくれるだろうかと」
「うんうん」
「私みたいな変な女を、植原君は迎えに来てくれるだろうかと」
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 05:45:11.65 id:rskxjXoi0
「あの時抱きしめてくれて、あの時泣かせてくれたのは、単なる同情じゃないかって」
と、その時、私の肩をそっと抱き寄せてくる腕の感触。
その胸に頬が当たっていた。
「じゃあもう一度泣いたらいいだろ?」
「植原君、いいのか?」
「ああ、本人が言ってるんだ」
「もう一度泣いたら、私は本当に君のこと好きになってしまうかも知れないぞ?」
「それもありかな」
「じゃあ、少し泣く」
「いいよ」
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 05:50:42.06 id:rskxjXoi0
世間の誰がどう思うか、そういうのはあまり気にしない。
高村さんの好意は、純粋にとても嬉しかった。
まぁ、俺の彼女は馬鹿で、なんかアレで、そんでもってナニだ。
だがそれも悪くない。
俺の彼女は、高村さんというんだ、それ以上でも以下でもない。
――――――――――――――――――――――――――――――
「おはよう植原君、今日も良い朝だな」
「……そうだな、しかしまだ朝の5時で、ここは俺の部屋なわけだが」
「夜這いだ」
「ストレートだな!?」
「うむ、人肌の温もりが恋しくて、つい押し掛けてきてしまった」
「どうやって入ってきたんだよ……」
「サムターン回し」
「…………」
俺、ちょっとくじけそうです。
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/01(月) 05:53:09.38 id:rskxjXoi0
最初、単に思いつきでカッとなってスレ立てました、ごめんなさいorz
つまらないと言われて辞めようかとも思いましたが、いくつか擁護が来たので、
思い切って即興でつたない文章ですが、頑張らせてもらいました。
お付き合い頂いた皆様、ありがとうございます。
いつの間にか自分のチラシの裏になっていて、本当にごめんなさいorz
でも、私も結構楽しかったです、ありがとうございました。
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2006/05/01(月) 05:55:48.98 id:iHNP73fk0
>>66
乙最初はよくある××クールモノ化と思ったけど
何気に涙有りでよかった
高村さんかわいいな。微妙にエロやりそうでエロそのものをやらそうな雰囲気が気に入ったよ