列聖

彼はその街を愛していた。街を愛し、街に住まう人を愛し、街の教会を愛した。故に苦労して富貴したのちにも、街に教会に人々に財を分け与えることを厭わなかった。あるとき敵が街の壁外まで迫り来り、剣を掲げ盾を打ち鳴らした。守備兵悉く恐慌し、市民の逃れ去る者が絶たなかった。彼は私財を投げ打ち兵を雇い槍を揃えた。神に祈り、奮戦して攻城を防ぎ、敵を撃退したが、さて街の議会は困惑した。彼の武功は称えらるべきかな、しかし街の大権を与えてもなお彼の功には見合わない。悩む長老どもにある信心深い若者が進み出て言った。「彼に俗世で最高の栄誉を与えよう」。早速彼は殺され、聖人に列せられた。