愚人ホワイヌ・スティークの帰郷

山間の寒村に住む愚人ホワイヌ・スティークにとって、世界は村の教会を中心とした半径数リーグの谷間、 それも谷のいっそうせばまる村境の橋まででしかなかった。 彼はそこで小麦を育て轢いて暮らしていた。無学の人ではあったが信心篤く、常に聖書を読んで…

原稿書き

みみけっと12に出す小説(?)を書いている。適当に地の文から引用してみる。 物盗りの押入って財布にも通帳にも手をつけずして適確に猥本の類のみを盗み去ったという非常に僅少な可能性を想定しない限り、犯人はなみしかありえなかった。こうした空き巣とし…

列聖

彼はその街を愛していた。街を愛し、街に住まう人を愛し、街の教会を愛した。故に苦労して富貴したのちにも、街に教会に人々に財を分け与えることを厭わなかった。あるとき敵が街の壁外まで迫り来り、剣を掲げ盾を打ち鳴らした。守備兵悉く恐慌し、市民の逃…