こいねこ 〜君に逢えたら〜

こいねこ―君に逢えたら (美少女文庫)

こいねこ―君に逢えたら (美少女文庫)

やたらとこの本のタイトルで検索して㌧でくる人が多いんでレビューしてみる。

16歳高校生が書いたということで一部話題になった本書。帯にもしっかり「16歳、高校生作家デビュー」とありますね。正直、フランス書院美少女文庫にはハズレばかりという印象しかなく。異様に尖がったエロ小説も出版してたナポレオンXXノベルスってレーベルは好きだったけど。

感想1。

「お約束」。この言葉には何か人に安心をもたらす効果があるのではなかろうか? たとえば幼馴染を「女性」として意識しだして苦悶する少年、「ご主人様♪」と呼び慕ってくれるロリ猫耳少女。そして先達の文章に倣った堅実な描写と表現。下手に奇を衒うよりもこうした「お約束」の積み重ねから導き出される結末こそ、抜きを目的とするエロ小説に求められるものでしょう。たとえば「ナニがドリルになってしまった」などという奇天烈な設定のエロ小説は、仮に描写巧みでエロスの大安売りをしていようと、そのことに気をとられて自慰に専念できるものではありません。また、読者の中にはそうしたネタ小説を嫌う人間も多いでしょう。この「こいねこ 〜君に逢えたら」は、あえて独自性を廃し、堅実な設定と描写と展開を積み重ねることで、商業作品として最大公約数の読者を獲得しようとしているのです。
文章が読みづらい? 作者のデビュー作です、これから書きなれていくことで解決されるでしょう。
表現が大げさだ? 一つ一つのシーンを印象に残す手法なのです。なんでもない日常でさえ、大切であるという作者の思想が色濃く表れているのですよ。
エロくなくて抜きに使えない? 汝精子を無駄に地に垂らすなかれ。来るべき日に備え、精巣にたっぷり溜めておけという神の啓示に違いありません。精子たちを無為に殺すことを避け得たわけです。
ラスト、消滅した猫耳少女の手紙を何度も何度も読み返す主人公の描写は、そうした描写を何度も何度も異なる小説・メディアで目撃してきた我々の姿を重ねざるを得ません。確実にして堅牢な表現を貫いていた作者が、最後にこうしたメタフィクション的手法を取り入れたことに驚きを隠せません。

忘れない、忘れたくない思い出は目を閉じるたびに鮮明に蘇ってくる。

680円という一日の食費と同額を支払った私にとってこの一文は、たとえ読者の誰もがありきたりとこの小説を感じて忘れ去っても、必ず覚えているという作者の内面をありありと現出させているようでなりません。

こいねこ―君に逢えたら (美少女文庫)は全国の書店で絶賛発売中です。

感想2。

びしょうじょぶんこわじんざいぶそくがいちじるしいですねまる

話は陳腐(思春期で幼馴染のヒロインとギクシャクの主人公→「ご主人様」と読んでくれるネコミミ少女登場→エロエロしまくりんぐ→色々あって幼馴染と結ばれる→初エッチ→恩返しが目的のネコミミ少女は主人公が幸せになったことで目的を完遂、消滅する→「俺はナナのことを忘れない」完)
文章は普通。書きなれていないためやや読みづらいけど。
描写はオーバー。そこらへんのエロ小説から拾ってきたような語彙の積み重ね。ぶっちゃけエロいことはやってる*1のだけれどもエロくなく。場面場面がぎこちなくてつぎはぎだらけのようだからそう感じるのかもしれん。まるで二次元ドリーム初期の凡作のようだ。
採点は好きじゃないけれどあえてすると45点。ヒロインが猫の化身じゃなくて狐だったら+30点したかもしれないのに残念だ。いかに商業的に需要が寡少といえど少しは狐耳ものもあってもいいんじゃないか。何でないんだシッパル!

ぶっちゃけ萌えイラスト以外に見るべきところのないいつもの美少女文庫、ってのが妥当な小説ですた。榊MAKI絵なんで好きな人は好きな絵柄だしね。
まあなにより、16歳が書いたエロ小説が商業ベースに乗ってしまった、ということがこの本について最もおもしろかったところ。
美少女文庫新人賞受賞作らしいんですが、これが出版されたということはそれ以外の応募作はいったいどの程度のできだったんでしょうね。

*1:電車の中での羞恥プレイだの輪姦未遂だの