中国に架空戦記が流行らない理由 「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む:架空戦記モノと中国オタクより

「中国では面白い架空戦記がなかなか無い」

ということだとか。

彼の話すところによれば、中国の人民解放軍には改造して超パワーアップするような兵器が無いというのが大きな問題らしいです。
確かに人民解放軍と言えば人海戦術というイメージが…

 超兵器の存在よりも、中国人は歴史的に架空戦記を必要としていないんじゃないかと思う。

 90年代前半の架空戦記流行の要因に、「日本が第二次世界大戦で負けている」という事実があるのは間違いない。敗戦のルサンチマンとまでは言わないが、「弱い日本を強化してアメリカに勝利する」という架空戦記の基本図式は敗戦国でしか成り立たないからだ。いってみれば、架空戦記とは現実の欲求不満をあり得たかもしれない過去の栄光にぶつけている敗者のオナニーにすぎない。だからこそ流行期は超零戦と超大和がズガガガドカーンと景気よくアメリカ軍をやっつける内容が受けたわけだ。基本的に読みきりの新書では腰を据えた歴史改変などできないため、超兵器を投入するか現代兵器を送り込むか利根のカタパルトを修理するくらいしか勝利の契機はない。中国の出版事情はしらないが、娯楽小説では一巻が売れなければ続きを出させてもらえないだろうから架空戦記ブームに超兵器は不可欠かもしれないが、けして超兵器がなければ面白い架空戦記ができないわけではない。

 第二次世界大戦に勝利していることになっている中国共産党は現代に至るまで膨張政策を取り続けているから、あえてif小説の中で中国を大勝利させる必要もない。かといって日清戦争やそれ以前、あるいは中華民国時代の軍閥をネタに架空戦記をかけるかというと、結果的に中国共産党が勝者とならない架空戦記は出版できるかわからないが読者受けも悪かろう。かといって無敵共産党大勝利!な架空戦記も流行りそうにない。勝者が現実以上に大勝利する小説なんぞ何がおもしろいのか。ドイツ式装備でかためた中国軍がアメリカ軍と激突する小説はしらないが、中国共産党を否定できないor中華民国を肯定できないという縛り*1第二次世界大戦を舞台にした架空戦記の大きな障碍となろう。架空戦記が流行しなければそりゃ面白い架空戦記がでてくるはずもない。

 だいたい、日本が負ける架空戦記はそれまでの単純な日本軍大勝利物が飽きられてきて、ようやく商業出版できたものだ。確かに日本の仮想戦記は多様化していて、日本軍が敗北する小説もめずらしくないし中には絶望的な本土決戦をやらかす架空戦記まである。あるにはあるがあくまでそれは多様化の結果で、書店の売上をみるかぎり架空戦記の主流は相変わらず「第二次世界大戦で日本がアメリカに勝利する」話だ。

 中国で架空戦記が流行ることがあるとすれば、現代戦ものくらいではないだろうか。これならば現状の対外政策に不満を持つ層の適度なフラストレーション解消になるし、、国家の威厳を傷つけることもないだろう。まさか現代戦ものでわざわざ自国を敗北させる究極のマゾ趣味小説がでるとも思えないし。


 中国の架空戦記事情なんぞかけらも知らないので、なにか勘違いしてる点あったらコメントで突っ込んでください。

*1:小説では知らないが、PCゲームにおいてはHearts of Ironが発売を禁止されている