英語発達小史

 H.ブラッドリの「英語発達小史」読んだ。「英語の成立―The Making of English」というやつである。いい加減古い本なのですべてを鵜呑みにはできない。原書は1904年発行。
 とはいえ、20世紀初頭まで、「教養ある人々」は今日の「バス」の謂いで「omnibus」を日常的に使ってたなど著者にとっての「現在」「今の」英語が垣間見られるのがおもしろい。まだこのころは米語の影響がさほどでなかったらしい。ドイツ語と英語の対比からいかに古い時代の英語が動詞の格変化など複雑な文法事項を切り捨てつつ、なお洗練されていったかをわかりやすく解説している。
 感想としては、英語と比べると日本語は他言語の影響弱いように思える。それでも語彙は漢籍・仏典から大量に輸入したけど、たとえば文法が英語より劇的に簡易化したかというとそうは思えない。言語を変えてしまうほどに大量の異民族が侵入した経験をもたないせいだろう。古典の面倒な文法事項が江戸時代にはかなり崩れていたのは話者の自然的な要求の結果か。

英語発達小史 (岩波文庫 青 659-1)

英語発達小史 (岩波文庫 青 659-1)